かかりつけ医による2型糖尿病診療を支援するシステムの有効性に関する研究(J-DOIT2)
糖尿病診療の手引き「日本における糖尿病の療養支援の現状」
糖尿病患者の増加
 近年、世界の糖尿病患者数が増加を続けている現状と呼応して、日本の糖尿病患者数も増加しており、その増加率は益々大きくなっている。図1に示すように、2007年度の調査では890万人であり、糖尿病患者を否定できない人(糖尿病予備軍)が1,320万人で合計2,210万人の多くの患者数に増加している。糖尿病患者の増加率は2002年から2006年までは80万人増加しているが、その後2006年から2007年の1年間で70万人増加しており、益々増加の率が上昇しているが明らかである。この増加の原因としては、おそらく生活習慣の変化が大きな促進因子になっているものと思われる。世界のレベルでも糖尿病患者数は増加しており、肥満患者も増え、国連でも糖尿病撲滅に向かって世界一致して協力する決議を行っている。「健康日本21」対策で歩数の増加、肥満の抑制などを目指しているが、その傾向は決して改善されていない事が報告されている。すなわち、生活習慣の改善は国家レベルでも、改善の運動を行っても、その効果が発揮されるのは、困難でありその実現には国民レベルや県民レベルの多くの市民を対象とする場合、特別の方法を工夫する必要がある。従って、世界、国家を対象とする場合には、まだ生活習慣の改善方法は十分でなく、その結果糖尿病患者数は増加することになる。これらの患者数の増加は、地方(田園地区)に多いのか、あるいは都市に多いのか、生活習慣の相違との関係から、興味のあるところである。
糖尿病患者と糖尿病予備軍の推移
糖尿病治療体制の現状
 現在の日本における糖尿病管理・治療がどのようになされているかを次に述べる。現在890万人の糖尿病患者が存在するが、その50%(445万人)の患者が実際医療機関で受診されている。そのうち、図2示すように専門医が診療しているのは20%程度(90万人)で、多くは基幹病院で糖尿病療養指導士と共にケアしており、80%(355万人)はかかりつけ医によって、治療されている。勿論、診療所の中には糖尿病専門医も多く見られ、療養指導士がこれらの診療所で働いている。療養指導士は日本では米国のように独立した医療者として、教育指導に対価を支払うまでその身分を認めていないが、米国ではCDEとして医療のある程度裁量権を認め、活躍の場を認めている。
糖尿病患者の受診状況
糖尿病患者の何割が実際治療されているか?
 日本において糖尿病患者の医療施設で受診している割合は図3に示すように、3回にわたる厚労省の調査で、平均45-50%程度であり、現在890万人の糖尿病患者の内450万人にも上る患者は医療機関に捕捉されていない状態であるので、多くの患者の血糖コントロールが不十分で、合併症の危険があり、透析などが将来必要な患者が多く存在する。すなわち我々の感知しないところで悪化していることとなる。このような患者に対し、地域医療あるいは国として、どのようにセイフティーネットを設けることができるのか、重要な課題である。これらの患者の中には、健診を受けていない患者も多く、特定健診などの受診率も国全体でも28%程度と高くない。
 受診中断率も多くの研究がなされているが、15%程度から、J-DOIT2パイロット研究では7%程度であり、その抑制には電話、手紙などの方法で抑制できる傾向があるとされているが、大規模研究の結果が待たれる。この研究の中で、(1)20歳−30歳代の若い患者、(2)男性、(3)血糖の比較的コントロールされていない患者に中断率が高く、これらの患者により注意して継続的医療を受けられるよう種々の働きかけが必要である。特にJ-DOIT2パイロット研究では若い患者で電話介入したものの方に中断率が高く、その抑制する方法に工夫が必要である。これらの患者にどのような心理的な問題や、仕事との関係などについてこれからの研究が待たれる。
糖尿病が強く疑われる人における治療の状況の年次推移(20歳以上)